最近耳にするDX。自社でも取り入れたいという話は出ている。
でも、どんなにデジタルに変換すると言っても人対人のコミュニケーションを大事にしたいので、実際に導入した姿を想像できない・・
接客を、DX化する。
「DX化する」という表現、漠然としていて理解し難いと思います。
これまで人がやっていた仕事を、アプリやロボット等に代替させることによって人の仕事をデジタル化すれば完了する、というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
総務省のHPでは、DXとはデジタル技術の活用による新たな商品・サービスの提供、新たなビジネスモデルの開発を通して、社会制度や組織文化なども変革していくような取組を指す概念、と定義されています。
また、DXを実現するには、これまでのシステムをITに「変換」するだけでは十分とは言えず、それを最大限活用し、社会全体にとって最適なシステムへと「変革」する必要があるとも表現されています。
つまり、”接客をDX化する”という言葉には、
単にこれまで人が受けていた注文をタブレットで対応したり、決済機を置いて精算をセルフサービスにすればいいというだけでなく、それを導入した社会を誰しもが当たり前のように受け入れ、戸惑わず、気持ちよく生活できるようにするところまでが求められているということです。
では、接客業界でDXを推進するにあたって、実際に使われている接客方法とは一体どんなものでしょうか?
接客業界におけるDX
接客業界ですでに進んでいるDX化の文脈でよく語られるのは、例えば、eコマース、電話接客、オンライン接客といったものです。接客業におけるお客さまとのつながりは、リアルなものに縛られずDXによってさまざまな形が取られてきています。
ここからは、それぞれのツールの総称と、メリット、デメリットについて説明していきます。
1.eコマース
ネットショッピング。電子商取引。
2.Web接客
お客さまが来店しておらず、遠隔地(店舗以外)で接客を受ける。チャット型、/対面型がある。
2-1.チャット型Web接客
チャットサービスを利用し、お客様とのやり取りの中で商品をおすすめしたり、問い合わせに対応する。
2-2.対面型Web接客
テレビ電話や、オンライン会議サービス等でお客様とスタッフが繋がり、お客様のお悩みや相談に合わせた商品をスタッフが提供する。
3.遠隔接客(=リモート接客)
お客さまが来店されており、遠隔地(お客様が今いる店舗以外)にいるスタッフが接客を行う
もちろん、上記で例に出したものだけが全てではありません。
接客業におけるDXにはさまざまな形があり、それぞれの課題やどのようにDX化を図るかといった、企業様の方針によって導入すべきツール、サービスは変わってきます。
お客様の体験、満足度を重視する接客業の特徴を考えると、
もし、先に述べたように接客をDX化することを「単純なデジタル化、IT化すること」というイメージを持たれている場合、新たにこんな不安を抱かれるのではないでしょうか。
- 接客の本質を欠いてしまうのでは?
- 接客の一部が簡素化され、接客が担うべき、お客様との関係構築が希薄になってしまうのではないか?
- うまくいくイメージが持てない!
遠隔接客で叶えられる、接客のDX
例えば、ブライダル、コスメカウンター、不動産のモデルルームなどといった場所での接客では、お客様がスタッフとともに店舗で商品を見たり、実際の施設を訪れることで、商品を購入したり、その物件に住むことを決めるといった意思決定をすることになります。
お客様とスタッフとの接点を減らすことは顧客体験の低下に繋がるため顧客が離れるのではないか、前章の最後に例に挙げたような懸念が生まれることも想像に難くありません。
接客業においては近年、単なる接客に留まらない、更に先の「接遇」という概念が自社の顧客満足度や企業ロイヤルティを向上させるためには必要不可欠であるとして注目されています。
この「接遇」は、必要最低限のサービスだけでなく「目の前のお客様にご満足いただけるよう、一歩踏み込んだサービスを提供すること」を指し、それを意識して顧客体験の向上を図るような取り組みも増えてきています。
また、Salesforce社の調査によると、
顧客がデバイスでつながり24時間365日のサービスを期待するのに対し、実情は企業側の対応が追いついておらず、これはB2Cのビジネスに止まらず、B2Bの購買意志決定層においても、80%がリアルタイムでの対応を望んでいる
出典:https://www.salesforce.com/jp/campaign/customer-experience/
という、現実と顧客からの期待の間にギャップがあることも示されています。
こうしたことからも、接客のDX化において「顧客体験」は非常に重要になるポイントといえるのではないでしょうか。
その意味で、お客様への接客をAIが対応するわけでも単なるデジタル化でもない、人が全てを行う遠隔接客には、たとえ接客方法がリアルではなくなったとしても顧客体験を向上させられる可能性があります。
ここからは、そんな「顧客体験」に着目した事例を紹介します。
遠隔接客で接客をDX化した取り組み5選!
1、ダイソン株式会社(家電メーカー)
感染症蔓延により、販売スタッフの店頭配備を制限されお客様に体験を通じて商品の良さを理解いただく場がなくなってしまうという課題を解決すべく、遠隔接客ツールを導入。
お客様が店頭で商品を手に取りながら、同じ場所におらずともスタッフと相互のコミュニケーションが可能です。遠隔接客ならではのデモを行ったこと等顧客体験を向上させたことにより、未実施店舗に対して、導入店舗では月間販売台数が約25%アップした。
出典:https://www.beeats.co.jp/products/solution/digital/enkakusan_real/case01.html
2、株式会社日本旅行リテイリング
支店にご来店されたお客様の「受付」「案内」において、非対面・非接触にて対応ができるアバター遠隔接客システムを採用。来店予約なしで店舗に来店されたお客様に、アバター越しのスタッフが要件のお伺いから相談まで適確な対応が可能。業務を効率化し、適切な人材配置を実現しながら接客データの分析により接客の品質を向上させている。
出典:https://ascii.jp/elem/000/004/084/4084755/
3、ケイアイスター不動産株式会社
感染症が拡大している渦中で、展示場での見学や商談時のリモート接客に対するニーズが高まり、遠隔接客ツールを利用し無人内覧を実現。店舗スタッフがいないプライベートな展示会場で、必要に応じたリモートスタッフの説明を受けながらの安全かつ安心な内覧により、顧客体験の向上を図りつつ、接客にかかるコストを下げながら、高品質でありながら低価格な商品の提供を実現している。
出典:https://ki-group.co.jp/wp/wp-content/uploads/2022/02/2022.2.25_202201IKI.pdf
4、三井不動産株式会社
「三井ショッピングパークららぽーと海老名」の一角に、販売員が常駐せずにインタラクティブサイネージで接客を行うデジタルストアを設営。アバターを介して販売員が遠隔地から店舗への呼び込みや店舗内の消費者に対して接客を行い、対話を通じた商品説明に対応できる仕組みを提供している。
出典:https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2019/031500/
5、株式会社京はやし
お弁当を売る店舗に遠隔接客を導入し、非接触・非対面で誰でも安心して気軽に利用できるように、新たな試みとして遠隔接客を活用した半無人の販売店を実現する。無人販売の時間帯は、現地にスタッフがいないものの、店内に人がいないことに戸惑ったり操作がわからなかったりすることで利用者が困ってしまわないよう、店舗に客が訪れると遠隔からスタッフが客の弁当購入のサポートをすることで客の不安のない無人販売店舗の実現を図る。
接客のDX化で顧客体験を向上させよう
接客のDX化により懸念される顧客体験の低下。
上述の事例のように、接客をDX化することによってお客様と対面でコミュニケーションを取らない時間が生まれます。この時間をお客様が落ち着いて意思決定できる時間と捉えれば、そこに合わせて変化させた接客体験を利用することで、お客様にとってこれまでと同じかそれよりも快適な検討/購買の場を提供できる可能性が生まれます。
接客のDX化を検討しているけど、顧客体験は落としたいくない。落とせない。
そんな方のお役に少しでも立てていれば幸いです。
もう少し具体的に自社での導入イメージを持ちたいと感じられた方は、
弊社ではそうしたご相談もお受けしておりますので、お気軽に問い合わせください。